クロストーク
地域のみなさまへ届けたい
私たちにできる「チーム医療」
薬局と薬剤師にできる領域を超えていきたい。
予防医学の観点から、地域の健康を支える
人生100年時代と言われる現代。いつまでも健康に過ごすためのポイントの1つは、日常生活における健康の相談や体調が悪い時に受診できる医療機関「かかりつけ医」や信頼できる薬剤師に出会うこと。今回は、地域の健康を見守る「県立大学前クリニック」院長 松田巌医師と「ひばり谷田薬局」小西真弓薬局長に、お二人の思いを語っていただきました。小西 真弓 薬局長(以下:小西)
松田先生が、ここ、静岡市駿河区谷田にクリニックを開業されて、2025年で15年となりますね。どういった思いや経緯で、この地に開業されたのですか?
松田 巌 院長(以下:松田)
この地区には静岡県立大学、県立美術館、県立図書館がある、緑も豊かで街並みのキレイな文教地区です。こんな素敵な場所に住みたいと思うほど気に入っていました。また、開業前は、静岡市立清水病院に11年ほど勤務していたのですが、当時担当していた患者さんが通える範囲であること、分かりやすい場所であることも、決め手となりました。

松田:今では、幅広い年齢層の方が来院されますね。私は、元々、消化器外科の診療をしていたため、自分の持っている技術、特に内視鏡の検査を中心に行いながら、このエリアの方々の生活習慣病の予防に注力したいと考えています。元気で長生きしてもらうためには、病気の原因を防ぐことが大事です。日本人の死亡原因の上位はガンですが、特に日本人に多い、胃ガン、大腸ガン、乳ガンは、実は早期発見し、早期治療を行えば、死亡リスクの少ないガンなのです。それなのに、死亡原因の上位に位置している。早く見つけ、治療を始められるようにすること。あるいは予防することで、元気に長生きが可能になります。そんな手助けを行うことが、私なりの地域貢献だと考えています。
小西:家族や友人からの紹介などの口コミで、検査を希望される方が近年増えてますよね。それをキッカケに「かかりつけ医」として来院される方も多くなって。そのような方に、私ができることは何かって考えた時に、ただお薬を渡すだけではいけないと感じます。処方通りのお薬を出し、正しく飲んでいただくというのが役割。お薬を飲まずに結果がでないことは、先生の治療が未完に終わってしまうということ。それをできる限り防ぐために、私たち薬剤師も患者さんとの心的距離を近づけ、話も聞いてもらえるような関係を築くこと、患者さんの状態、状況を聞かせていただける関係作りを大切に思っています。

松田:私は、患者さんに飲んでもらいたい薬を処方するまでが仕事。薬の副作用や相互作用など総合的な話は、専門家である薬局の方にお任せする、役割のバトンタッチですね。
小西:そうですね。クリニックの傍に店舗を構える薬局は、そのクリニックの付随的存在に思われがちです。そのため、薬局の印象は、クリニックの印象にも影響すると思います。例えば、受付のスタッフの態度がよろしくないと、その後、私がどんなに一生懸命に患者さんと接しても、最初と最後に接するスタッフの印象が悪ければ、総じて薬局の印象が悪くなってしまうもの。
そうなると、先生のいい評判を、薬局が落とす危険性につながるのです。患者さんに、これから先も松田先生に診てもらいたい、憂いなく自分の体を先生に任せたいと思ってもらえるような対応を、薬局も心掛けることに努めています。

松田:それはありがたいです。クリニックの印象を、薬局の方がフォローしてくれていることもあるかも知れませんね。

小西:とんでもないです。「松田先生は丁寧に話を聞いてくれる。ご自身のお話もしてくださる。だから、話がしやすい」と言う方がとても多いです。先生は、何かあれば話を聞いてくれる、相談できるという安心感を与えてくださるので、私たちも仕事がやりやすいです。
松田:僕の処方した薬が、別の病院でも処方されていることを、小西さんが気づいてくれて、訂正してくれることがありますね。
小西:患者さんの生活の様子など、可能な限り情報収集を努力して、コミュニケーションをとれる関係でありたいです。そして、薬局で収集した情報をクリニックにフィードバックすることは、患者さんにとって有益となるチーム医療の実現になりますね。
松田:私たちが目指すのは、地域の健康寿命を延ばすこと。地域の包括ケアシステムに参加できていなくても、それぞれの医療機関ができる地域貢献のカタチがありますから。
小西:お薬の授受以外でも、地域の方を見守ることってできますよね。ある方が、健康のための外出が大事だと感じ、それをルーティーンにする方法として、ご自身でラジオ体操のカードみたいなスタンプカードを作られました。それを持って薬局に来てくれたんです、「今日は薬局まで散歩ができたので、スタンプを押して」と。患者様は、薬局なら健康の相談もできるし、と思ってスタンプポイントに選んでくださったのは、とても励みになります。その他にも、犬のお散歩で寄ってくれる人、手作りのアート作品を「飾って」といって持ってきてくれる人などいらして、地域の方との関わりがとても嬉しいです。また、早朝に松田先生がご近所を歩いている姿を見かけたから、自分もウォーキングを始めたという方もいますよ。先生自ら実践されて、地域の健康意識の改善に貢献されていますね。
松田:自然に行っていることが、結果的に周囲に好影響を与えられていたら、嬉しいですね。
